第3部 土地活用
1. 土地活用としての事業方式の種類
土地有効活用を行う方法にはつぎのような方式がある。
1. 自力建設方式
事業の企画立案から資金調達、建物の建設、テナント募集、建物の管理・運営に至るまで土地所有者が自ら行う方式である。
2. 事業受託方式(総合請負方式)
- (1). 意味
受託者(デベロッパ-等)が土地所有者に代わり(事業資金はオ-ナ-の負担)、企画立案、市場調査、事業収支、建物の設計・施工までを一括引き受け、オ-ナ-の希望によっては建物の管理・運営まで引き受ける、という方式である。 - (2). 事業受託方式(総合請負方式)
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- ・事業は土地所有者の名義で行われ、土地建物の所有権は移動しない。
- ・受託者が建物を一括賃借する場合は、賃料保証機能を果たす。
- (3). 受託者が建物一括賃借の場合の、土地所有者への賃料支払い方式
つぎの2つのタイプがある。 -
- ア、オ-プン方式
受託者とテナントの転貸借条件をオ-プンにし、受託者の一定のフィ-を控除し土地所有者に賃料を支払うもの。 - イ、クロ-ズド方式
テナントとの転貸借条件とは無関係に、受託者が収益を保証するもの。
- ア、オ-プン方式
3. 土地信託方式
- (1). 意味
土地所有者(委託者)が、その土地を信託銀行等(受託者)に信託し、信託銀行等が信託契約により、事業資金の調達から建物の建築、テナント募集、建物の維持・管理あるいは分譲等を行い、その管理・運用の成果を土地所有者(受益者)に信託配当とし交付する、という方式である。 - (2). 内容
信託期間終了時には、信託銀行から土地所有者に土地・建物などの信託財産が交付される。土地信託では土地所有権が信託銀行に移転し、信託銀行の名義で賃貸等が行われる。しかし、これは信託上の移転という形式的なものなので、税務上は、土地所有者が直接土地・建物を所有・運用しているものとして扱われる。
4. 等価交換方式
- (1). 意味
土地所有者がその所有する土地を提供し、ディベロッパ-等の事業主体がその土地の上に建物を建てる建築費等を提供し、建物完成後に、土地及び建物に関する権利を各々資金提供額に応じて取得するもの。 - (2). 種類
区分所有建物等の建設の場合、つぎの2つのタイプがある。いずれによるかで譲渡得税等が異なる。 -
- ア、全部譲渡方式
土地所有者は土地全部をいったん事業主体に譲渡し、従後は譲渡した土地価額総に見合う土地付区分建物を取得するものである。譲渡資産は土地、買い換え資産は土地及び建物となる。 - イ、部分譲渡方式
土地所有者は事業者から取得する建物代金に相当する分だけの土地を事業主体に渡し、従後は建物のみを取得するものである。譲渡資産は土地、買い換え資産は建物のみとなる。
- ア、全部譲渡方式
5. 共同ビル方式
- (1). 意味
2人以上の地権者(土地所有者、借地人)によって共同で事業化されたビルのこと。 - (2). 所有形態
つぎの2つがある。 -
- <縦割り区分所有>
- <横割り区分所有>
- (3). 床配分の方法
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- ア、まず従前の各地権者の土地所有権等を評価する。
- イ、ついで、従後のビルについて階層別効用比、位置別効用比、地価配分率等により従前資産額等に応じて配分する。
6. 一括借り上げ方式
企画段階からテナント(建物の借り主)がいて、建物を一括して借りてもらう方法である。土地活用のより確実な方法である。
7. 借地権設定方式
- (1). 土地を事業主体に賃貸し、建物は借地人が建設する方式。デベロッパ-が借地を取得し、開発を行い、オ-ナ-には地代を支払う方式である。
すべてのメリット、リスクはデベロッパ-が負う。 - (2). 一般定期借地権方式と事業用定期借地権方式とがある。後者はロ-ドサイド店舗テナント貸しに向いている。
8. 建設協力金差し入れ方式
- (1). 意味
事業パ-トナ-(ディベロッパ-:テナント=建物借り主)が土地所有者に建設協力金を差し入れ、事業主たる土地所有者が建設した建物を事業パ-トナ-が一括して借り上げ、管理運営していく方式である。
地主は当初の資金負担なく建物を取得できる。 - (2). 内容
提供された建設協力金は事業資金に充当され、建物完成後は事業パ-トナ-の建物一括借り上げのための保証金に転換する。
保証金の返還方式は、全額事業パ-トナ-に返還するもの、全額土地所有者が償却する(返還不要)もの、一部を土地所有者が返還するものなどがある。
返還時期も、賃貸借終了時期に一括返済するもの、契約期間内に分割返済するもなどいろいろである。
9. 不動産管理会社設立方式
不動産貸付業を営む個人が、不動産管理会社を設立して運営していく方式である。管理委託方式、転貸方式、不動産所有方式、いずれかの組み合わせ方式がある。管理委託方式が一般的である。
会社設立のメリットはオ-ナ-の、所得の分散、法人の特典享受、相続財産(委託料収入)の減少化にある。
2. 土地活用方法の選択
具体的土地活用方法の選択においては、つぎの諸点から判断する。
(1). 対象土地の立地的特性
その土地がどのようなところに所在しているのか。
- ・駅に近いかどうか、幹線道路沿いの土地か、建ぺい率や容積率はどうなっているか。
(2). 土地所有者の考え
自分の立場をどう位置づけたいのか、借金、税対策、収益性をどう考えるか。自分は経営にどの程度関与するのか。
(3). 社会的、経済的要因
現在および今後の社会・経済情勢、金融情勢の検討をする。
また、活用方法内容(企画内容)に斬新さがあるか、お客のニ-ズ(必要性、要求)に応えられるか、市場の状況はどうか。
(4). 事業収支
投資採算性を確保できるか。採算性が確保できないと活用の意味が薄れる。以下の点をチェックする。
- ・いくつかの方法を比較検討したか
- ・事業の収支計算内容はどうなっているか
- ・事業収支計算内容に無理はないか(賃料、空室率、修繕費等々)
- ・事業収益の保証制度、内容に納得できるかなど。
- ・テナント(建物借主)誘致はどうなっているのか